貨幣の動きとピルロ
『評価と贈与の経済学』(内田樹・岡田斗司夫 徳間ポケット新書)を読んでたら、ふいに「サッカーは見事なゲームである」って書かれているのに出くわしました。
「サッカーってほんとうに贈与と反対給付の人類学的な仕掛けをみごとに表象しているゲームだと思いますよ。人類学的な叡智をグラウンドで鮮やかに見せてくれる。パスラインが多彩な人、誰も考えなかったようなラインにパスを出す『ファンタジスタ』がゲームのキーパーソンになるんですから。」
と贈与についてサッカーのファンタジスタを例に書いてありました。
この本は別に経済のことを難しく書いた本ではないのですが、たまたま仕事や貨幣の事に触れたときに、内田樹さんが言ったいたことで、「貨幣の本質は運動」という話からサッカーに例えたようです。貨幣は「どんどんパスを出していると、あそこはパスがよく通るところだって貨幣の方からすすんでやってくる」なんてことも書かれていました。こういう話をサッカーに例えてくれるとバシッと頭に入りますな。
先日、HDに録っておいた「インテル対ユベントス」と「ブラジル対イタリア」(今年の3月にスイスで行われたフレンドリーマッチ)を見たのですが、改めてピルロに魅了されてしました。
特にインテル戦でのフリーのなり方がすごかった。常にいいポジションで鮮やかにボールを受ける巧みさ。きっと、ボールをもらう直前の瞬間的な動きとか、常にスペースを見つける能力だとかがすごいのだろうけど。そういうのって身につけようと思ってできるレベルのことじゃないのかもしれないですね。
それに、ピルロって見てると他の選手のために「良いパスをどんどん供給しますよ」っていうのが伝わってくる。エゴがないっていうか。実に簡単にボールを回してくし、スペースを見つけて走った選手には丁寧なパスを出してあげる。勇気を持ってゴール前に飛び込んだ選手には「一か八か勝負してこい」っていうボールを供給する。なんかガッついてる感じがまったくないし、気持ちを汲むところは汲んであげる男気もある。
ボールが「貨幣」だとするとピルロのところには本当にお金がよく回ってくる。でも、それを惜しげもなくばらまく。実に気前がいいんですね。
そんなピルロもあとどれくらい現役なのかは分からないだけに、その気前のよさを出来るだけ見ておく必要がありますね。